中国・習近平国家主席はBRICSサミットを欠席した(写真:ロイター/アフロ)
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 (福島 香織:ジャーナリスト)

 BRICSサミットが7月6日、ブラジルのリオデジャネイロで開催されたのだが、中国の習近平国家主席が欠席したことがいろいろと憶測を呼んでいる。BRICSサミットに習近平が欠席したのはこれが初めて。

 米中新冷戦構造が先鋭化してくるなかで、中国が主導力を発揮する新たな国際秩序の枠組みとしてBRICSは注目されている。このタイミングで習近平がサミットに欠席する理由がわからない。一部では、習近平に深刻な健康問題が起きているとか、あるいは党内権力闘争が激化しており北京を離れられない状況であるとか、言われている。

 BRICSサミットは2012年に始まった新たな経済体連盟の年度サミット。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカを中心に米国ら西側先進国パワーに対抗するグローバルサウス勢力の核心になると期待されている。

 実際、中国が一番経済パワーを持っているので、BRICSは中国主導の組織といっていい。2024年1月からアラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピア、エジプトが正式加盟しており、今回はイスラエル・イランの戦争後、初めてイラン代表団が出席する国際会議でもある。そんな外交の晴れ舞台で習近平が欠席し、李強首相が代理出席するというのは不可解だろう。

BRICSサミット欠席の謎

 中国側は習近平欠席の理由については説明していない。元米国国家安全委員会中国事務主任で、現ブルッキンス学会の中国専門家のライアン・ハスは「習近平が最近、ルーラ・ブラジル大統領と北京で会談しているからだ、と言われている」と指摘している。習近平とルーラは過去1年の間に2回も会談しているので、いまさらわざわざブラジルまで出向いてルーラと会談する必要がない、と考えているのではないか、という。

 実のところ、このサミットに欠席した首脳は習近平だけではない。ロシアのプーチン大統領は国際刑事裁判所の指名手配を受けているので、オンラインで会議に参加している。イランのマスード・ペゼシュキアン大統領もイスラエルとの戦争の余波で欠席することになっている。

 習近平としては仲のよいプーチンが欠席しているうえに、インドのモディ首相がブラジルの国賓として出席することも、欠席したくなる要素かもしれない。モディが習近平より格上に扱われるのは、プライドが傷つけられるというわけだ。

 だが、もしそういうチンケな理由で、習近平がサミットの出席を見合わせたならば、ホストであるルーラとしては、たまったものではない。ブラジルは今年、BRICSサミット、G20サミット、COP30のホストも務め、国際舞台で十分にアピールしたのち、来年の激烈な大統領選に挑み、史上空前の四期連続大統領の座を狙っているのだから。

 では、習近平の欠席が、プライドの問題や習近平の気まぐれでないとすれば、一体何が原因なのか。