台湾の頼清徳総統(写真:共同通信社)
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 のっけからクイズで恐縮だが、日本の石破茂首相、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領、そして台湾の頼清徳(らい・せいとく)総統に共通する「深い悩み」が、何だかお分かりだろうか?

 猛暑の中、わざわざスマホを開けてくれている読者に申し訳ないので、解答を申し上げるが、それは「国会で少数与党の中の最高権力者」という苦しい立場である。それぞれ最高権力の玉座に鎮座していながら、国会で過半数を握っていないために、せっかくの「権力の杖」が振るえないのである。

起死回生を狙った“奇策”

 石破首相は、昨年10月に政権を発足させるや、総選挙に打って出て大敗を喫した。そのため連立を組む公明党と合わせても、衆議院で過半数に届かなくなってしまった。さらに先日(7月20日)、周知のように参院選でも敗北を喫し、参議院まで与党で過半数を割ってしまった。

 本来なら、6月の都議会選も含めて三連敗、スリーアウトなので、チェンジ(退陣)すべき時である。それでも政権に未練たらたらで、醜くしがみついているが、もはや権力の座も風前の灯だ。

 次に、韓国の尹錫悦大統領は、昨年4月の総選挙で、やはり大敗を喫した。全300議席中、自らが率いる与党「国民の力」が108議席にとどまったのに対し、李在明(イ・ジェミョン)代表(現・大統領)率いる野党「共に民主党」が175議席と、過半数を超えた。

 それによって、尹大統領が進めたい政策が、汝矣島(ヨイド=韓国国会)でことごとくストップがかかってしまった。業を煮やした尹大統領は、昨年12月3日、ついに戒厳令を敷いて、「国会をストップさせる!」と宣言した。

 だが、深夜に戒厳令などという時代錯誤的な手段に出たものだから、5200万韓国国民の怒りを買って、自らが「ストップ」となってしまった。すなわち、今年4月に大統領を罷免されたのだ。

 そして、今回の台湾である。台湾の立法院(国会)選挙は、総統選挙と同日の昨年1月13日に行われた。総統選では、与党・民進党の頼清徳候補(副総統)が勝利したものの、立法院選挙では、少数与党となってしまった。具体的に、全113議席の内訳は、民進党が51議席、野党の国民党が52議席、第二野党の民衆党が8議席、無党派が2議席となった。

 国民党と民衆党は、同じ野党として共闘することが多いから、やはり立法院の過半数は野党が握っている。そのため、昨年5月20日に就任した頼清徳総統は、自らの政策が立法院をスムーズに通らず、この1年あまりというもの、切歯扼腕(せっしやくわん)してきたのだ。