OPECプラスは供給拡大へ「タガが緩んだ」(写真:Maxx-Studio/Shutterstock.com)
目次

米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=66ドルから69ドルの間で推移している。夏季の原油需要の拡大や中東の地政学リスクが意識されて、価格のレンジ圏は先週に比べ2ドルほど上昇している。だが、供給拡大へ舵を切ったOPECプラスや景気の先行きを考えると、原油価格は秋以降に大きく下落する可能性がある。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの有志8カ国は7月5日、8月の原油生産量を前月から日量54万8000バレル増加させることで合意した。

 サウジアラビアやロシアなどの有志8カ国は、4月から自主減産(日量220万バレル)の縮小を始め、5月、6月、7月と日量41万1000バレルの増産を決定した。8月を含めると4月以降の増産幅は日量約192万バレルとなる。

 OPECプラスの8月の増産は市場の予想を上回ったが、原油価格が急落することはなかった。4~5月に市場予想を上回る増産を発表した際には価格が55ドルまで下がるなどパニック売りが生じたが、今回は1%安にとどまった。

 北半球の需要の堅調さが原油価格を下支えしている。

 欧州調査企業ケプラーは「中東のOPEC加盟国の7~8月の原油消費量は6月に比べて日量40~50万バレル増加する」と予測している。アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相も9日「OPECプラスが増産した分は市場で吸収されており、在庫は積み上がっていない」との楽観的な認識を示している。

 OPECは長期の需要についても強気だ。10日に発表した年次報告書で「世界の原油需要は2050年までに19%増加する」との予測を示している。

 有志8カ国の次回の会合は8月3日に予定されているが、「9月も大幅な増産をする」との観測が出ている。ゴールドマン・サックスは6日「OPECプラスの有志8カ国は9月に日量55万バレルの増産を決定し、自主減産の縮小を終了させる」との見解を示した。