
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=64ドルから68ドルの間で推移している。市場の関心は需給動向に戻りつつあるが、イラン情勢をめぐる中東地域の地政学リスクへの警戒もくすぶり続けている。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
ロイターは6月27日「OPECとロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは8月も日量41万1000バレルの増産を実施する予定だ」と報じた。
OPECプラスの有志8カ国(サウジアラビア、ロシア、クウェート、イラク、アラブ首長国連邦、カザフスタン、オマーン、アルジェリア)は7月6日に会合を開催する。
有志8カ国は4月から自主減産を開始し、5月、6月、7月にそれぞれ日量41万1000バレルの増産を決定している。
7月までの増産幅は計算上、累積で日量140万バレル規模になる。だが、一部の国々が過去の超過分を清算するための減産を行っているため、実際の増産は半分以下の規模にとどまっている。
OPECプラスにとって頭痛の種はカザフスタンだ。
ロイターによれば、カザフスタンの6月の原油生産量は前月比7.5%増の日量188万バレルだった。カザフスタン政府が国内で操業する米大手石油企業をコントロールできないため、「(これまでの過剰な生産を)清算するために減産をする」との約束に反して、生産がさらに増加した。
イスラエルとの軍事衝突で心配されたイランの原油輸出は好調だ。
船舶追跡企業Vorteraによれば、6月1日から20日までの間のイラン産原油の中国への輸出量は日量180万バレル超と過去最高を記録した。イラン産原油の主な買い手である中国の独立系石油精製企業が備蓄の補充のために輸入を増やしたことなどが主な要因だ。
サウジアラビアの原油輸出も高水準だ。調査企業ケプラーは「サウジアラビアの6月の原油輸出量は前月比45万バレル増の日量633万バレル、7月には日量750万バレル近くまで増加する可能性がある」と分析している。
OPECプラスはイラン産原油の途絶を見込んで供給増に舵を切った節があるが、その思惑は外れてしまったようだ。
一方、需要面では、米国のガソリン需要の弱さに注目が集まっている。