履き心地を追求した40年
5本指靴下の最大の特徴は、足指の負担を分散し、バランスよく歩くことで健康を促進する効果にある。足指が独立して動くことで、踏ん張りが利き、姿勢の改善にもつながる。この機能性が評価され、次第にスポーツ選手を中心に愛用者が増えていった。
だが、初期の5本指靴下は、直線的な形状でかかとのフィット感が悪かった。転機は1988年に訪れた。地元・和歌山の島精機製作所が、かかと付きを製造できる編み機を開発し、これにより、足の形に自然に沿う「L字」形状の5本指靴下が実現した。

「島精機まで車で30分という距離は、私たちの生命線です」と井戸端社長は語る。1996年には、島精機の編み機を使用し、完全無縫製の5本指靴下を実現した。縫い目がないことで肌触りがスムーズになり、足の形に立体的にフィットする構造が可能になった。
さらに、ニッティドは独自の技術開発を重ねた。足指股の位置が4カ所とも異なることに着目し、それぞれの指股に合った位置に配置することで履き心地を高めた。履き口を締め付けすぎないようにゴム糸を使わずにずれにくくする特殊な編み方も開発した。


「履きやすさと快適さの両立こそが、永遠の課題でもあります。当社は専業だからこそ蓄積できた技術とノウハウがあります」。井戸端社長の言葉には、40年間5本指靴下だけを追求してきた自負がにじむ。

こうした技術の積み重ねは、「5本指靴下は履きにくい」という既成概念を打ち破った。現在では、プロのサッカー選手やマラソンランナーなど、多くのアスリートに愛用されている。