トランプ関税が世界経済を揺るがしています。中国と米国の交渉では「レアアース対半導体」で激しい攻防が繰り広げられ、日本企業のサプライチェーンへの影響も懸念されています。地政学リスクが高まるなかで日本企業はどう舵取りをすべきなのか。経済産業省でFTA(自由貿易協定)交渉などの経験を持つ、経営戦略支援のオウルズコンサルティンググループ羽生田慶介CEOに聞きました。(取材日:2025年6月25日)
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【前編】トランプ関税で「米国にまともな工場」は無理ゲー、「価格転嫁せず」も筋違い……様子見一辺倒の日本企業
有力な「チャイナプラスワン」は? ASEANとの関係強化が重要に
──中国拠点から米国への輸出が難しくなる中、日本企業はサプライチェーンの再構築が求められています。「(中国以外の国・地域に生産拠点を分散させる)チャイナプラスワン」としてどこが有望ですか。
羽生田慶介氏(以下、敬称略):これまでは地理的な近さやコスト、港などのインフラ面でベトナムが人気でした。ただ、今トランプ大統領の矛先が向けられているのがベトナムです。ベトナムやカンボジアが中国からの迂回ルートになっているとされ、通商環境が悪化する可能性があります。
次に注目されているのが、フィリピンです。もともとフィリピンでハードディスクなどを生産する日本企業もいましたし、人口も多く、今後のマーケットとしても期待できます。
フィリピンも含め、ASEAN(東南アジア諸国連合)の状況を注視し、戦略を立てるのは日本企業にとって重要なテーマです。
──日本はこれまでもASEANと関係が深いですが、なぜ今重要なのですか。