「チャイナプラスワン」は日本、地政学リスクをチャンスに
羽生田:すでに「チャイナプラスワン」のような形で中国の拠点を移す動きはみられています。
実は、「チャイナプラスワン」として魅力的な拠点は日本です。労働者の質も高く、今は円安で価格競争力もあります。さらに政治や対米関係においても安定していると評価されます。
ヨーロッパや米国の企業から見ても日本に新しい拠点を持つことは重要視されています。日本に投資が集まることを前提に、自分たちの技術をアピールしていくことは大事です。日本に投資が集まってくることを前提にいろいろと仕掛けていくのは、ワクワクします。
──一連の地政学環境の変化が日本企業にとってもチャンスにできるということでしょうか。
羽生田:そうです。チャンスは4段階あります。
まず1つ目のチャンスは補助金です。不安定な地政学環境の中では、政府が積極的に補助金を出して投資を呼び込もうとします。
2つ目が新たな共同研究開発です。中国に依存しない形で新たなプロジェクトや技術が生まれる可能性があります。
そして3つ目が需給シフトに伴う新たなビジネスチャンスです。「チャイナプラスワン」のように新たな国やマーケットの開発ができます。
最後は、こうした機会に大きな経営改革を進められることです。地政学環境が変われば、多様なサプライチェーンの再構築などが急務になります。再構築による経営コストの上昇をどこかで吸収しなければいけませんが、これが経営手腕の見せどころです。
私はよく「サプライチェーンを強靭にする代わりに、製品ラインナップを減らしましょう」という話をしています。こうした経営改革によって地政学リスクをチャンスにできるかが重要になります(前編もご覧ください)。
【前編】トランプ関税で「米国にまともな工場」は無理ゲー、「価格転嫁せず」も筋違い……様子見一辺倒の日本企業
羽生田 慶介 (はにゅうだ けいすけ)
オウルズコンサルティンググループ代表取締役CEO
政府・ビジネス・NPO/NGOの全セクターにて社会課題解決を推進。経済産業省(通商政策)、キヤノン(経営企画、M&A)、A.T. カーニー(戦略コンサルティング)、デロイトトーマツコンサルティング執行役員/パートナーを経て現職。経済産業省大臣官房臨時専門アドバイザー、一般社団法人エシカル協会理事、認定NPO法人ACE理事、一般社団法人グラミン日本顧問。