企業進出はグローバルから「マルチナショナル」へ
羽生田:今は日本がASEANから学ぶ時代です。かつての成功体験から「東南アジアで指導したのはウチだ」と言う“老害企業”もいますが、この日本のマインドセットを変えていかなければいけません。
ASEANではイノベーションが加速し、現地の財閥の資金力は日本企業を上回るケースもあります。東南アジアのテクノパークでイノベーションを学んだり、今後のインド・アフリカ進出を彼らに導いてもらったりすることも重要になります。これからのASEANを通じた日本企業の世界への新しい戦い方になるでしょう。

──内向きになる経済を巻き戻すのではなく、新たなグローバリズムを模索するということですね。
羽生田:「国益ファースト」の流れは続くとは思いますが、すべて保護主義・ブロック経済になるのではなく、新たな国際経済をデザインすることが求められていると思います。
企業として世界での戦い方を考えた時に、キーワードはグローバルよりも「マルチナショナル」です。世界全部を攻めるグローバルカンパニーなんてものは存在しません。
例えば、フォルクスワーゲンの1つ目の顔は「ドイツ・ヨーロッパ」ですが、2つ目の顔は長期間投資を続けてきた「中国」です。どこの国における存在感を自社の資産としてデザインするかが次の経営課題になります。
──ただ、まず足元では中国の生産拠点をどこか他の場所に移していくことが急務ですね。