「今売るよりも、価格が上がるのをもうちょっと待とう」
小林:原因のひとつとして考えられるのは、2024年8月に再開した「堂島取引所でのコメの先物取引」です。8月当時はコメの平均価格が上がり続けていましたので、問屋が「今売るよりも、もう少し『待って』価格が上がってから売った方が儲かる」と判断した可能性があります。
いずれにしても、今はコメの流通は2004年以降「自由」になっていますので、問屋が特に違法なことをしたわけではありません。とはいえ、消費者にとって令和のコメ騒動は家計へのダメージが大きいことは事実です。
また、小売店も問屋が売り渋る以上、価格を下げるわけにはいきませんし、そもそも「今どの業者がどのくらいコメの在庫を抱えているのか」を把握することができません。
では、どうすれば投機や転売的な動きを抑制し、生産者と消費者の需給バランスが取れた形でコメを販売できるのか。「コメが今、どこに、どれくらいあるのか」が見えるサプライチェーンを作るしかありません。
──どういうことでしょうか。
小林:「米トレーサビリティ法」という法律がありますが、これは主にコメの食品偽装や事故米の不正転売などを防ぐために作られた法律です。どの業者が、現在どれくらいのコメの在庫を抱えているのか、という情報は同法では明らかになりにくい。
ひとつは、米トレーサビリティ法を改正し「コメの在庫が今、どこにどれだけあるのか」という流通経路上のコメ在庫の所在を明らかにする目的を追加することが有効ではないかと考えます。本改正に合わせて、緩やかな罰則規定の見直しを行うことも検討すべきではないかと考えます。

もうひとつは、テクノロジーを活用して、リアルタイムにコメの流通経路を確認すること。RFIDタグという電池を持たない小型ICタグを米袋やパレットに貼り付け、チェックポイントをいくつか設けておけば、中央で省庁やJAが「今、コメがどこにどれだけあるのか」が分かるようになります。
──約1年続くコメ騒動で疲弊している庶民からすれば「かつてのようにJAに集荷を一任し、価格をコントロールすべきだ」という声も聞こえてきそうです。