あと3年で手仕舞いするのは惜しい…

 その先輩は高配当株に限らず手広く売買し、いいパフォーマンスを残していた。しかし、昨年70歳を迎えたのを機に全保有株を売却し、都内のマンションも引き払った。夫人の認知症が進行し、一人では手に負えなくなって子供の家の近くに転居を決めたのだ。

 仲間内の送別会で「(保有株の売却益は)すごいことになっているんじゃないですか」と問われた先輩は「2度目の退職金だ。いいタイミングで売れて良かったよ」と笑っていたが、どことなく寂しそうだったという。

 こうした話を聞いていた男性自身は、積み立て投資の軍資金となる企業年金が支給期間10年の有期だったこともあり、投資は70歳までにしようと漠然と考えていた。

 しかし、いざゴールが近づいてくると、あと3年で手仕舞いすることが惜しく感じられるようになってきたと打ち明ける。

「年金生活になって、配当のありがたみがよく分かりました。最近は光熱費や物価が上がっていて公的年金と企業年金だけでは食べていくのがやっとだったと思いますが、配当があるから友達と飲みに出かけたり、孫に小遣いをやったりできます」

 昨年には新NISAの口座も開設。仕事を離れてから高配当株投資家のブログやSNSに目を通すようになり、6銘柄ほど購入した。そのうちの1銘柄は株価指数に採用されたことで一段高となり、株式投資の面白さも感じ始めた。

「子供からは『そのうち大暴落するかもしれないから、儲かってるうちに売った方がいいよ』と言われますが、『もう少し続けたい』と望む自分がいる。50代の頃には、『70歳になって株式投資なんてとんでもない』と思っていたんですけれどね」