国は「プラチナNISA」創設を目指すが…
「代理人になるような子供がいればいいですけれど、うちは無理かな。3人とも投資にはあまり関心がなさそうなので。私や妻が認知症になったら銀行口座の管理や公共料金の支払いの代行などは頼めると思いますが、皆、自分の仕事が忙しいし、『代わりに運用してくれ』というのは難しいだろうなぁ」
子供たちの前では「俺がぼけてきたら、株は全部現金化していいぞ」と冗談を飛ばすこともあるというが、「ある程度の年齢になったら、遺言なり、エンディングノートなりでしっかり意思表明をしておかないといけないですね」と話す。
国は今、65歳以上の高齢者を対象とした「プラチナNISA」の創設を目指している。新NISAの対象外である毎月分配型投信をラインアップに加え、非課税で効率的な資産運用ができる環境を提供し、老後の生活にゆとりをもたらすのが狙いという。
しかし、プラチナNISAのターゲットは男性のように投資からの卒業を意識する年代でもある。
大和総研によれば65歳以上の世帯の金融資産残高は2023年度末の1129兆円程度から2035年度末には1601兆円程度に拡大する見通しだが、プラチナNISAがその獲得を意図した金融機関の営業ツールになってしまうとしたら残念極まりない。
国や金融機関には、高齢者から資産を引っ張ろうとするだけでなく、より良い人生のゴールに向けた戦略も充実させてほしいと切に願う。