そこで、2025年3月からは、どの程度の飲酒や速度が危険運転にあたるか、適用条件を明確にするため、法務大臣の諮問機関である法制審議会で、アルコール濃度や速度の数値基準を設けるか否かを含めた検討が進められています。

加害者の運転がいかに悪質かを示す意見書を遺族が検察に提出

 こうした動きの中、今回、遺族が富山地検に提出した全38ページの意見書では、飲酒の影響や逆走の事実の他、積雪による盲目運転や赤信号無視の危険性についても指摘し、

『「正常な状態にある運転者では通常考え難い異常な状態で自車を走行させていた」と言え、「道路交通状況等に応じ運転操作を行うことが困難な心身の状態」であり、「アルコールの影響により前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処することができない状態」であった』

 として、危険運転致死罪の適用要件に当てはまると結論づけています。遺族がおこなった積雪実験と視界等に関する鑑定結果は、7月にも追加で提出の予定だということです。

 会見の最後に、長男の中田康介さんは、集まった記者たちにこう訴えました。

「この1年3カ月、私たちは母の無念を晴らすために闘ってきました。母は、どれだけ生きたかったことでしょう。今後こういったことが起こらないよう、そして、皆さんが安心して暮らせるよう、富山地検には意見書の内容を精査し、私たちの思いを汲みとって前向きに検討していただき、危険運転致死罪で起訴されることを期待するばかりです」

 飲酒、逆走、盲目運転、赤信号無視の末に起こった死亡事故は、「過失」なのか、それとも「危険運転」なのか……、富山地検の判断に注目したいと思います。