国民レベルでの米国好きも今回の攻撃で反米になる懸念

 第二に、国民レベルでは必ずしも反米でなく、米国に留学をしてそのまま米国に住み続けるイラン人も多い。大都市には活発なイラン人コミュニティもある。

 私にはイラン人の友人知人もいるが、個人的な感情として反米的という人にはあまりお目にかからない。文化レベルでは、米国文化に親しんでいる人も多く、米国の映画や現代アートは、大変に人気だ。

 映画はVPN経由のオンラインやブラックマーケットなどで視聴されることもある。北朝鮮でも韓国映画やドラマは結構視聴されているが、映画やドラマは人々の共通理解を増やしていく作用がある。

 このような国民レベルでの米国好きが、今回の軍事攻撃で失われてしまうことが懸念される。自国の領土を攻撃する国の映画を見たいとは思わないからだ。中東だけでなく世界に大きな影響のある事態の鎮静化を願って、今後の事態の推移を見守りたい。

山中 俊之(やまなか・としゆき)
著述家・起業家
 1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。2010年、グローバル理解やグローバル人材開発支援、世界とつながる地域創生支援を目的としたグローバルダイナミクスを設立して代表取締役就任。2015年からは、神戸情報大学院大学教授を兼任、アフリカ等からの留学生に対して社会イノベーションについて教鞭をとる。研究室の卒業生の中からは欧州有力ファンドから資金調達に成功した起業家も生まれる。世界101カ国を訪問(2025年4月現在)。先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。

著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)、『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界の民族超入門』(ダイヤモンド社)など。