佐野政言の「思わぬ境遇」に同情の声も
そして今回の放送では、短い登場シーンながらも、政言のキャラクターが深掘りされて、SNSなどで話題となった。田沼派の勘定組頭・土山宗次郎とコネをつくろうと、長谷川平蔵らが狂歌を学んでいるところに政言がやってきた。
その後、土山の豪邸「酔月楼」に向かった平蔵と政言たちだったが、平蔵がうまく蔦重を見つけて、土山や南畝のそばまで案内してもらったにもかかわらず、政言は気後れして、あいさつすらもまともに交わせないまま。蔦重から「どうぞおそばに」と気遣いを受けても、政言はこう言うのみだった。
「よい、やはり拙者はかような場は慣れぬし……親の具合もようないので長居できぬしな。では」
と言って政言は、その場から立ち去ってしまう。
そして、ドラマの終盤では、老いた父・政豊を桜の木の近くに連れ出して「今年も見事に咲きましたな」と話しかけるも、政豊は「ところで、佐野の桜はいつ咲くのだ?」と目の前の桜すら認識していない状態。政言が「もう…咲いておりますよ。父上」と寂しそうに笑うシーンは心に残った。
引っ込み思案で人間関係をうまく構築できず、家で待っているのは認知症の親の介護……となれば、精神的に追い詰められてもおかしくはない。SNSでも今回明かされた佐野の思わぬ境遇に、同情する声が多く寄せられた。
社会的に失うものが何もないために、罪を犯すことに何の躊躇もない人のことを、ネットスラングで「無敵の人」と呼ぶ。意知を襲ったとき、政言はそんな胸中にまで至ってしまったのだろうか。
悪役とされる人物さえも一方的に描かないのが『べらぼう』の魅力だ。これからの推移を見守りたい。