対日直接投資残高150兆円の難易度

 日本経済が取るべき戦略の1つとして対内直接投資の促進、端的に言えば、「外国資本の取り込み」が市民権を得つつあるのは間違いない。

 まず「2030年までに120兆円」とはどのような難易度なのか。結論から言えば、難易度はやや高いという印象だ。

 現状確認をしておくと、図表①に示すように、2024年末時点で対内直接投資残高は約53.3兆円、名目GDP(約610兆円)比では約9%である。過去10年間(2015~2024年)の伸び率を平均すると前年比で約+8.5%であり、この増勢を前提とすると100兆円を突破するのは2032年、120兆円を突破するのは2034年になる(150兆円だと2037年)。

 従前の目標であった100兆円目標ですら2030年の到達が難しいということを考えると、この段階での目標引き上げは若干チャレンジングな動きにも見受けられる。

【図表①】

 ちなみに、2024年末の名目GDPを前提とした場合、名目GDPに対する対内直接投資残高の割合は100兆円では約17%、120兆円では約20%になる。OECD平均(2023年で約56%)からは乖離があるものの、10%にも満たない現状からすれば長足の進歩ではある。

 少なくともG7ではイタリアが約22%、ドイツが約25%なのだから、20%に到達すれば「資本の鎖国」と言われるような状況に一石を投じた格好になりそうだ。

 なお、国連貿易開発会議(UNCTAD)ベースの国際比較で2023年の日本はGDP比6%未満で、これは北朝鮮以下と揶揄されてきた(図表②)。今回の政府目標を達成すれば、この状況を大きく脱することになる。

【図表②】

「半世紀ぶりの円安」と言われる通貨安を踏まえれば、一段の高水準が期待されるが、目標達成後にその後の数字を検討すれば良いだろう。