なぜ、ロシアは戦争をやめられないのか

松田:国民に説明がつかないからではないでしょうか。ロシア政府は自国民に対して、「ウクライナの政権は欧米の言いなり。ナチスのようなファシストで、ロシアに対してテロ活動をしている」と説明してきました。それを懲らしめるのがウクライナ侵攻のそもそもの目的なのですが、ロシアにとってこの戦争は失敗続き。当初の目的を実現できていないのです。

——ロシアはなぜ、この無理な戦争を始めることになったのでしょうか。

松田:ウクライナは1991年の独立以来、欧州寄りの姿勢を続けていました。ただ、2010年に就任したヤヌコビッチ大統領は親ロシアの立場で、EUとの自由貿易協定締結を拒否します。そのため、国民の反発を買って政権は倒れました。

 これに危機感を強めたロシアは2014年、ウクライナに侵攻し、クリミアを併合しました。それを見て、ウクライナ東部ドンバス地域の親ロシア勢力は「反ウクライナ」の動きを強めます。ロシアと連携しながらウクライナ政府側との戦闘を続け、2022 年の戦争につながっていくのです。

——戦争以外の手段はロシア側にはなかったのでしょうか。戦争に訴えなければならなかった理由は何ですか。

松田:ウクライナは18世紀以来、ソ連時代も含めてロシアが支配してきました。ところが、1991年のソ連崩壊で、ウクライナは欧州への仲間入りを目指すようになっています。ロシアは、そんなウクライナを政治、経済、安全保障の面で容認できなかった。

 私自身はロシアによる侵攻の最大の要因は「感情論」だったと考えています。自分の一部だと思っていたウクライナが逃げていくのを許せなかった。それが開戦前のプーチン大統領の演説などに表れています。

——軍事力では劣ると見られていたウクライナが徹底抗戦しています。その要因は。