「戦争に負けたら国がなくなる」
松田:ウクライナにとって2014年のクリミア併合は全く想定外でした。また、東部ドンバス地域の親ロシア勢力が、ロシアと連携して立ち上がることも想定できていなかった。しかし、ロシアに占領された地域では暴力を受けたり、行方不明になったりする人が実際にいました。そこで初めて、ウクライナの人々は「ロシアは自分たちの生存に対する脅威」だと理解したのです。
ウクライナは軍の改革、強化を進める一方、対ロシア外交も進めたのですが、クリミア併合以降の対ロ問題を解決できず、その後に全面的侵攻が起きてしまいました。そうなると、国が小さいとか兵士が足りないとか言っていられない。軍事力が足りなければ他から借りてくる、同時に外交力を駆使して仲間も増やす……そういうことをこの3年間やってきたわけです。
戦争に負けたら自分たちの国がなくなる、自分たちは奴隷になる。そういう危険を察知したウクライナ人の頑張りは理解できると思うんです。
——戦争が始まってから、ウクライナ東部ではウクライナの子どもたちがロシアに連れ去られたことも報じられました。
松田:連れ去られて無理やり養子縁組させられたり、キャンプに入れられてウクライナを憎むよう教育される例もあったりしたと言います。ウクライナが主権を失うことになれば、帝政ロシアやソ連の時代よりもさらに悲惨な状態になる可能性があるわけです。
例えば、ソ連時代は一致団結して共産主義国を建設するという理想がありました。しかし、今のウクライナ人は、この戦争に負けると、ロシア各地に強制移住させられて散り散りになるかもしれないという懸念すら抱いているのです。
——あらためてロシアの狙いを考えると、クリミアと占領した東部4州だけでなく、もっと支配地域を広げたいのでしょうか。