私抜きでは大統領にはなれなかった

 両者のSNS上の口喧嘩は連日続き、50回を超えた。内容は回を増すごとにエスカレートしていった。

 マスク氏は、2024年大統領選でトランプ氏を物心両面から支援したことを強調した。

 同氏は2023~24年の間にトランプ氏はじめ共和党に総額2億9100万ドルの選挙資金を出している。

Musk takes credit for Trump's win in 2024. Here's how much he spent 

「私がいなければ、トランプ氏は大統領にはなれず、下院は民主党天下、上院は共和党が51議席(民主党は49議席)の厳しい状況になっていた。恥を知れ!(Such ingratitude!)」

「この質問について考える材料がいくつかある。トランプ氏が大統領でいられるのはあと3年半、私は、あと40年プラスは健在だ、ということ」

 これにはトランプ氏の堪忍袋の緒が切れた。もし面と向かっていれば、声を荒らげたはずだ。

「イーロンがいようといまいと、私は大統領になっていた」

 選挙のプロを自任するトランプ氏は、面子をド素人に潰されたこと、政治生命を3年半と制限されたことに対する怒りを爆発させた。

 それが、冒頭の「米国の予算を削る最も簡単明瞭な手段は、これまでイーロンにやっていた助成金を止め、イーロンが経営する企業に受注させてきた契約を破棄することだ」という「最後通告」になったのだ。

マスクが歳出法案に反対した本当の理由

 ところで、マスク氏はなぜ、下院で可決され、目下上院で審議中の「歳出法案」にこれほどまでに反対したのか。

 トランプ、マスク両氏の周辺から漏れてきた理由は以下の4つだ。

一、自分が官職もなく、国家の在り方を作り、政府の効率化に大ナタを振るったDOGE(Department of Government Efficiency=政府効率化省)が、期限切れとはいえ解除されたことへの不満。

二、自分が経営する宇宙インターネット企業「スターリンク」への航空管制システム管理権の認可が下りなかったこと。

三、米航空宇宙局(NASA)長官を引き継ぐことになっていたマスク氏の友人のジャレッド・アイザックマン氏がトランプ氏の意向で指名撤回になったこと(理由は同氏が過去に民主党上院議員候補に選挙資金を出していたためという)。

四、同法案にはテスラなどEV開発企業の税額控除が含まれなかったこと。

Axios Reports Real Reason 'Butthurt' Musk Attacked Trump Bill

 つまり、理由はすべてマスク氏の私利私欲が満たされなかったということだ。

 同氏は、これら4つの不満は隠して、表向きには「壮大で、美しい法案」が累積財政赤字をさらに拡大させる、という警鐘を鳴らすポーズをとったのだ。

 そのメッセージをマスク氏が誇る「X」の2億2000万人のフォロワーを通じて共和党議員に陳情させ、法案に反対させようという戦略だった。

(ちなみにトランプ氏の「Social Truth」のフォロワーは1億550万人)

List of most-followed Twitter accounts - Wikipedia

 だが、結果はマスク氏の目論見通りにはいかなかった。