謝罪はないがこっそり修正

 そして、自社の正当性に関する「言い分」をJBpressに送りつけてきたと伝え聞く。要諦はこうらしい。

①    著作権法第40条第1項による例外適用
②    JBpressの著作権も当該国会議員の著作権も侵害しない
③    公益性が高く記事として紹介
④    しかし媒体名は付記することに変更

 文面中、謝罪は一言もない「回答」だったそうだ。

 常識的な読者諸兄姉なら、ただちに①〜③の理屈に対してまったく腹落ちしないことに気づくであろうし、そもそも百歩譲って①〜③ならなぜ、媒体名を付記する修正を実施したのだろうか。

 やましいことがあるからではないか。

 それとも「仕方ないから付記してやった」のだろうか。なにより朝日新聞社の対応にはコンテンツ制作者に対する敬意のようなものが一切感じられないということを今一度声高に強調しておきたい。

 ちなみにこの修正に変更履歴や修正履歴は一切記されていない。当然のように経緯も記されていない状態だ(JBpressの当該記事には「編集部注」として事態の経緯が付記された)。

 下記の2つの引用を比較してみてほしい。最終更新日は記されているが、どの点が修正されたかは不明である。

 あとから経緯をたどることは不可能に近いだろう。

 そしてこの修正は圧倒的に、大きなメディアである朝日新聞社デジタル版にとって有利であろう。

 

上下ともに朝日新聞デジタル「国民民主・伊藤孝恵氏「参院選後、課題になるのは党のガバナンス」より引用。上が2025年5月29日、下が同年6月5日参照。

 新聞紙とデジタル版の大きな違いは記録性であり、アーカイブ性にある。

 新聞紙面は縮刷版やデータベースに改変コストが高い状態で記録される。しかしデジタルは違う。デジタル版の修正は容易で、その履歴は新聞社自ら示さない限り気づくことは困難だ。

 海外有力紙のなかにはそうした編集履歴を示すことで、公正さを担保しようとしている媒体もあるが、朝日新聞はまったくそうではないようだ。

 これでは自社に都合の悪い修正があったとしても、読者はほとんど認識できないだろう。同社はそれでよいと考えているのだろうか。それとも単に無意識なだけかもしれない。