その後、朝日新聞がとった対応とは?
著作権との兼ね合いでの懸念点を再度まとめておこう。

そもそも引用は「正当な範囲内」で行われなければならないという。文化庁の「著作権テキスト――令和6年度版」には以下のように記されている。
3 報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること、本文が引用文より高い存在価値を持つこと)
4 「出所の明示」が必要(複製以外はその慣行があるとき)(前掲テキストp.72より引用)
当初は「16日収録のインターネット番組で」という「出典表記」であった。この表記で元のコンテンツに辿れるという人はほとんどいないであろうことは明らかだ。
区別明瞭性も何もなく、そのまま文字起こしして、単独のコンテンツとして、活用、配信しているのだ。
JBpressも文字起こしのコンテンツを提供しているなかで、単独コンテンツとして同一性を保持するどころか無関係の写真を貼り付けて活用、転載することが、「報道目的の適切利用」といえるだろうか。筆者はそうは考えない。
また公開の政治的演説に関する例外規定があることも承知している。
(公開の演説等の利用)
第四十条 公開して行われた政治上の演説又は陳述並びに裁判手続及び行政審判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続をいう。第四十一条の二において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。(著作権法第四十条より引用)
だが、文化庁の前掲テキストは次のように記している(p.83)。
【「公開の演説等」「裁判等での陳述」の利用】(第40条第1項)
「公開して行われた政治上の演説・陳述」や「裁判や行政審判での公開の陳述」を、さまざまな方法で利用する場合の例外です。
【条件】
1 公開して行われた政治上の演説・陳述又は裁判手続等における公開の陳述であること
2 同一の著作者のもののみを編集しないこと
3 「出所の明示」が必要(文化庁「著作権テキスト――令和6年度版」(p.83)より引用)
なお、第40条第2項に関しては、正当な利用に関する留保がついており、やはり本件のような「丸ごと文字起こし転載」が「正当な利用」に該当するのか甚だ疑問である。
前回の小欄では、そのような事案について問題提起するとともに、このような朝日新聞社は信頼に値するかどうかを問うた。
幸いにして、佐々木俊尚氏のようなインフルエンサーに言及されるなどしたこともあって、記事は相当程度読まれたものと認識している。
さて、その後、朝日新聞社はどのように対応したのだろうか。
結論からいえば、朝日新聞社はこっそり修正した。