日本との関係など
中谷元防衛大臣は、3月末のヘグセス米国防長官との会談で、中国への対抗を念頭に、朝鮮半島から東シナ海および南シナ海を中心とした地域を一体の「戦域(theater)」としてとらえ、日米が同志国とともに防衛協力を強化する「One Theater(一つの戦域)」構想を伝えたと報じられている(朝日新聞4月15日付)。
日米豪、韓国、フィリピンなどを一つのシアターととらえ、日米豪韓比が協力連携する戦略的重要性を示したものである。
朝日新聞の6月1日付報道によると、中谷大臣はその後のシャングリラ会合で演説し、インド太平洋全域を一体とみなし、価値観を共有する国々との協力強化を目指す「オーシャン(OCEAN:One Cooperative Effort Among Nations)」構想を提唱したという。
ワンシアター構想とオーシャン構想は、実質的に同じ内容だが、関係国の理解を得るため、軍事色の薄い表現に変えたと見られている。
同構想は、基本的に米国が目指すインド太平洋戦略と軌を一にしており、ヘグセス国防長官もこれを歓迎し、本構想も念頭に日米の防衛協力がさらに進むことになろう。
しかし、これに先立ち、韓国政府は「朝鮮半島が日本のワンシアター構想に含まれることは問題だ」との懸念を、外務省を通じて日本側に伝えたとされる。
韓国では、ワンシアター構想が実現すれば、在韓米軍が中国の台湾侵攻時に投入される可能性があり、また、朝鮮半島有事の際に日本の自衛隊が介入する口実を与えかねないとの指摘が出ているという。
日本にとっても、日韓、日米韓の協力連携は不可欠であるが、現在鎮静化している反日感情が再び顕在化して、ワンシアター構想を絡めて在韓米軍の「戦略的柔軟性」や削減の問題に影響を及ぼし、必ずしも肯定的に受け入れられない恐れもある。
李在明大統領には、日米韓関係における様々な課題に対し、現実的視点に立って乗り越えてもらいたいところであり、日米両国も韓国の難しい政治状況を踏まえ、心した慎重な対応が望まれる。