結言

「蜘蛛の巣」作戦が画期的な作戦であったことは誰もが認めている。ウクライナの卓越したドローン戦の能力と秘密作戦遂行能力は高く評価できる。

 AI制御のFPVドローンを使用し、ウクライナから数千キロ離れた標的(例:ベラヤ基地、ウクライナから4700キロ)を攻撃する能力は、ロシアや国際社会に強烈なメッセージを送った。

 ウクライナの安価なドローンがロシアの戦略爆撃機等の高価値の資産に重大な損害を与える非対称戦の成果には素晴らしいものがある。

 我が国も敵基地攻撃能力を考える際に参考になる事例だ。

「蜘蛛の巣」作戦は、ロシアの長距離攻撃能力を制限し、防空兵器の再配分を強いることで、間接的に地上戦に影響を与える。

 しかし、前線の戦術的状況への直接的な影響は限定的で、ウクライナが不利な状況が直ちに解消される可能性は高くない。

 一方、プーチン大統領の「ロシアはこの戦争に勝利している」と言う主張には無理がある。

 自らが始めた戦争は3年2か月が経過しても継続し、この間にロシアが被った損害は膨大である。

 死傷者75万~100万人、国外脱出者約100万人による人的資源の枯渇。

 戦車・装甲車両約1万5300両、航空機288機、黒海艦隊の主要艦艇喪失など、冷戦時代の在庫がほぼ枯渇している。

 経済的には戦費2110億ドル以上、GDP(国内総生産)の10%超を軍事費に投じ、民間経済の縮小とインフレ率7%台と悪化している。

 国際政治的にはG7の制裁、NATO(北大西洋条約機構)の拡大、ロシアの地政学的影響力は大幅に低下している。

 これらの損耗は、ロシアの継戦能力と長期的な国力を確実に削いでいる。プーチン大統領はいまこそ戦争を終結すべきである。