作戦の実行

攻撃目標

 SBUは2025年6月1日、ロシア領内の主要な空軍基地(図1参照)に対して同時多発的なドローン攻撃を行った。特にベラヤ空軍基地とオレニャ空軍基地が焦点であった。

●イルクーツク州ベラヤ(Belaya、ウクライナから4700キロ)空軍基地:「Tu-95MS」長距離戦略爆撃機、「Tu-22M3」中距離超音速爆撃機の基地

●ムルマンスク州オレニャ(Olenya、同2000キロ)空軍基地:「Tu-95MS(Bear-H)」、「Tu-22M3(Backfire-C)」、「Tu-160(Blackjack)」 超音速戦略爆撃機の基地

●リャザン州ジャギレヴォ(Dyagilevo、同700キロ)空軍基地:「Tu-95MS」、「Tu-22M3」、「Il-78(Midas)」空中給油機の基地

●イワノヴォ州イワノヴォ(Ivanovo、同900キロ)空軍基地:「A-50」早期警戒管制機、「Il-76」戦略輸送機の基地

●アムール州ウクラインカ(Ukrainka、同6000キロ)空軍基地:「Tu-95MS」の基地

(注:ウクラインカ基地に対する攻撃では、トラックの爆発によりドローンが基地の到達できず、失敗したという)

 主要な空軍基地の写真は以下の通り。出典は「Planet Labs」

写真1「ベラヤ空軍基地」

写真2「オレニャ空軍基地」

写真3「ジャギレヴォ空軍基地」

実施要領

 SBUは、FPVドローンを中心に約116~150機の小型攻撃ドローンを使用した。

 これらのドローンは木製コンテナに隠され、民間トラックで標的の空軍基地から数キロ以内の地点まで運ばれた。

 作戦の秘匿のために一部のトラック運転手は積み荷の内容を知らされていなかった。

 攻撃時にはコンテナの屋根が開き、遠隔操作されたドローンが発進して駐機中の航空機を攻撃した。

 この作戦による損害についてはまだ確定していないが、Tu-95MS×9機(7機破壊、2機損傷)、Tu-22M3×4機損傷、A-50×1機損傷、An-12×1機破壊、Tu-160×1機損傷を含む少なくとも41機のロシア航空機が破壊または損傷したという情報がある。

 SBUの主張によると、この攻撃によりロシアの戦略巡航ミサイル搭載機の34%が損傷し、ロシアに約70億ドル(約1兆円)の経済的損失を与えた。

 攻撃の様子はビデオに収められ、特にベラヤ空軍基地では航空機が炎に包まれる映像が公開された。

 作戦の成功は、奇襲によるもので、特にオレニヤやベラヤのような遠隔地の空軍基地ではロシアの防衛体制が不十分だったとされている。

 なお、Tu-95MSは戦略爆撃機の中核であり、巡航ミサイルである「Kh-55」や「Kh-101」を搭載して長距離攻撃能力を有する。

 ロシアは約50機のTu-95MSを運用中と推定されており、ウクライナへのミサイル攻撃のために頻繁に使用されている。

 Tu-22M3は超音速長距離爆撃機であり、「Kh-22」や「Kh-32」ミサイルの搭載が可能だ。約60機が運用中であり、ウクライナ侵攻で積極的に使用されている。

 ただし、整備不足や事故による損失で、実際に稼働可能な機体は30~40機程度だという説もある。

 オレニヤやウクラインカ基地はTu-22M3の主要配備基地であり、これらの機体は定期的に作戦に参加している。Tu-22M3は、ウクライナへのミサイル攻撃や巡航ミサイルの発射に使用される重要な兵器だ。

 A-50は早期警戒管制機で、空中指揮統制や偵察任務に使用される。ロシアは9機(A-50U近代化型を含む)を保有しており、ウクライナ侵攻で重要な役割を果たしている。

 ただし、2023年にウクライナの攻撃で少なくとも2機が破壊され、稼働機はさらに減少している可能性がある。

 A-50は数が少なく、代替が難しいため、損失に伴う空中監視能力の低下はロシア空軍にとって深刻な打撃だ。