偶然を活用する能力とは
偶然を戦略的に活用する理論を提唱したのが、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ博士だ。彼は「Planned Happenstance Theory(計画的偶発性理論)」を提唱し、こう述べた。
「キャリアは計画だけで決まるものではない。偶発的な出来事を仕掛け、それを活用する能力が重要だ」
この理論は従来のキャリア形成法に大きな衝撃を与えた。従来の方法論は、特定のスキルや経験のパッケージを明確にし、それを計画的に身につけることを重視していたが、クランボルツはそれを覆したのだ。
クランボルツが挙げた「偶然を活用する能力」は以下の通りだ。
① 好奇心(Curiosity):新しいことに興味を持つ力
② 粘り強さ(Persistence):簡単に諦めず、挑戦を続ける力
③ 柔軟性(Flexibility):環境の変化に適応する力
④ 楽天性(Optimism):ポジティブに未来を捉える姿勢
⑤ リスクを取る覚悟(Risk-taking):挑戦を恐れず一歩踏み出す勇気
これらのスキルは、僕自身がヘッドハンターとしてエグゼクティブを評価する際に、無意識にチェックしてきたポイントと完全に一致する。
成功に必要なスキルは、大きく二つに分けられる。ひとつは「思考系ハードスキル」、もうひとつは「対人系ソフトスキル」だ。
では、「いい偶然」を引き寄せるためには、どちらが重要だろうか?
答えは明白だ。「対人系ソフトスキル」だ。
この直感的な答えは、科学的にも裏付けられている。
イギリスのリチャード・ワイズマン博士は、著書『運のいい人、悪い人』でこう述べている。
「運を左右するのは、性格そのものだ」
では、どうすれば運を引き寄せる性格を手に入れられるのか? 必要なのは、細かいテクニックの習得ではない。目指すべきは、「こんな人になりたい」という全体像を描き、それを体現することだ。