自分を「タグ付け」して発信する方法
浅く広いネットワークを築くには、自分の「ウリ」を明確に「タグ付け」して積極的に発信することが効果的だ。
たとえば、名刺交換の場で「○○社の××です」と所属を伝えるだけではなく、「健康食品のプロです」と一言加えるだけで相手の印象に残りやすくなる。
さらに、自分のキャッチコピーを考えておくのも良い方法だ。少し意外性を含んだフレーズにすると、さらに記憶に残りやすい。
たとえば、こんなフレーズを試してみてはどうだろう?
「お客様回りよりデータ分析が大好きな営業担当です」
「デスクにじっとしているのが苦手な編集長です」
特に転職や新しいプロジェクトに挑戦したいとき、この「タグ付け」は非常に重要になる。自分がどんな人間で、どのような価値を提供できるのか──。これを一言で伝えられる準備が、ネットワークを広げるのだ。
キャリアについて語る最後に、転職について僕の本音を話そう。
結論から言えば、転職は「してもいいし、しなくてもいい」。どちらも選択肢としてアリだ。なぜなら、転職は目的ではなく、手段のひとつに過ぎないからだ。
重要なのは、君が何を求めているのか──。それを明確にすることだ。手段は必ず複数存在する。転職だけが答えではないし、転職を視野に入れないのもリスクだ。
もし、君の選択肢に転職がまったくないとしたら、それは視野が狭くなっているのか、外の世界への恐れが強すぎる可能性がある。
逆に、転職しか選択肢がないと感じているなら、それは君がかなり追い詰められているサインだ。そんなときは、重大な決断をせずに一度立ち止まって、冷静に状況を見つめ直してほしい。
転職はゴールではない。君自身の求めるものにたどり着くための「手段」のひとつでしかない。重要なのは、「転職するかしないか」ではなく、次のような姿勢を持ち続けることだ。
* 世の中を広く見る視野
* 変化を恐れない心意気
* 常に他の選択肢を探る好奇心
* 自分の市場価値を知る冷静なリアリズム
* チャンスを待つ辛抱強さ
こうした姿勢を持っていれば、転職という選択肢が自然に生まれることもあれば、同じ会社で新たな挑戦が見つかることもあるだろう。(続く)
妹尾 輝男(せのお・てるお)
コーン・フェリー元日本代表/エグゼクティブ・コーチ
横浜国立大学経営学部卒。ロンドン、バミューダ諸島、東京にて石油製品トレーディング会社に勤務した後、1988年、スタンフォード大学で経営学修士(MBA)取得。ベイン・アンド・カンパニーを経て、世界最大の人材組織コンサルティング会社コーン・フェリーに入社。同グループで30年以上、主にグローバル・トップ企業のエグゼクティブ・クラスを対象に、ヘッドハンター、エグゼクティブ・コーチとして第一線で活躍。その間、日本法人社長を9年間、会長を1年間務め、現在は特別顧問。