目白押しのロシアを巡る地政学リスク
ロシアのノバク副首相は26日、OPECプラスの会合を前に「日量41万1000バレルの追加増産についてまだ協議していない」と発言した。ノバク氏はさらに「主要7カ国(G7)などによるロシア産原油の価格上限を現在の1バレル当たり60ドルから50ドルに引き下げる計画を受け入れられない」と主張した。
ロシア産原油は4月、1バレル=55ドル台の安値で取引されており、OPECプラスの増産によるさらなる下押し圧力を回避したい思惑があるのかもしれない。
OPECプラスの大規模減産を主導するサウジアラビアとロシアの協調に綻びが生じることになれば、原油市場のセンチメントが悪化することは間違いない。
一方、ロシアを巡る地政学リスクは目白押しだ。
ドイツのメルツ首相が「ロシアへの攻撃を立て直すため、ウクライナに供給する長距離ミサイルの発射制限を解除する」と言及したことで、「ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の衝突が激化する」との憶測が広がっている。
米国では連邦議会上院の超党派議員がロシアに追加制裁を科す法案を提出した。トランプ大統領が目指すウクライナとの停戦に協力しなければ、ロシアから原油や天然ガスなどを購入する第三国に500%の関税を課すことが主な内容だ。法案が成立する可能性が高く、そうなれば、ロシア極東のサハリン地域から液化天然ガス(LNG)を輸入している日本にも悪影響が及ぶことになる。
トランプ氏は28日「(プーチン大統領の和平交渉姿勢について)2週間以内に見極める」との考えを明らかにしており、ロシア産原油の輸出が今後大幅に減少する可能性は排除できなくなっている。
イランを巡る地政学リスクもくすぶり続けている。
イランと米国との核問題に関する協議は継続中だが、ウラン濃縮活動の完全停止を求める米国に対し、イランは断固拒否するなど膠着状態となっている。
トランプ氏が「ネタニヤフ首相に対し、米国とイランの核協議を妨害するような行動を取らないよう先週警告した」と28日に明らかにしたように、イスラエルによるイラン核施設への攻撃のリスクも残ったままだ。
だが、需要への懸念が高まっている中、地政学リスクによる価格の押し上げ効果はさらに弱くなっている感がある。