アジの食性
基本的にアジは動物性プランクトン食性の魚です。
一方、成長過程でカタクチイワシや三陸沖ではオキアミの食性もみられます。
少し古いデータになりますが、1957~64年にかけて主に相模湾や仙台湾その他の地域の定置網にて採取した約3センチから21センチのアジ約2200匹の胃の内容物を調査した研究論文があります。
そこでは約7割程度が空腹胃であったものの、内容物の出現回数と全体数、および各種出現量と全体量の割合を出してみると、「出現回数」としてはカタクチイワシが約41%、オキアミ類が37%を占めています。
また「出現量」においては、カタクチイワシが約65%を占めており、次いでオキアミ類が約29%を占めています。
その他は動物性プランクトンに類される、カイアシ類や端脚類という結果になっております。
簡単にまとめますと、アジはもともと小さな動物性プランクトンを食べる魚ですが、意外にもイワシやオキアミは大好物といったころです。
(参考:「マアジの生態学的研究 Ⅰ. 食性について」 鈴木智之著 日水研報告,(14):19-29)

アジの魚群移動
また、アジの魚群行動を千葉県館山湾における海流と釣況から研究したものがあります。
ここでは潮汐とともに、東京湾、相模湾、黒潮分流が館山湾に流れ込んでいることを複数の観測地点から塩分濃度や海水温の違いを測定することで証明しています。
また同時に館山湾中央部の水深40メートル付近で5月から7月にかけて実釣し、潮汐による釣果率の違いから、上記潮流とアジの魚群の流入とに一定の関係性あることを結論付けています。
これによって、日中は沖合の漁礁や天然礁の底層部付近にいる群れが、日没後に沿岸域まで回遊し、日の出には沖合に戻るといった「日周行動仮説」を裏付けるとしています。
(参考:「千葉県館山湾におけるマアジの魚群行動と海洋構造」根本雅生・澁谷勝晶・中野知香・古見拓郎・上嶋紘生・宮崎唯史・北出裕二郎著 La mer 55 : 1-10, 2017)