渡船出港直後の空の様子(写真はすべて筆者撮影)

春の気象とアジの活性

 毎年春本番になると、関東の堤防などから20センチを超える型の良いアジが釣れ始め、私は例年の楽しみにしています。

 この時期は平均気温も上昇し、気持ちの良い釣行や釣果への期待が高まります。

 一方で、気象の変化も目まぐるしく、たまに入ってくる冷たく強い北風は、釣行可否への影響以外にも釣りを難しくする要因とも言われています。

 今回はこういった現象が多いと感じる今年の傾向と対策のヒントとして、海水温と魚の摂餌・捕食行動との関係をおさらいしながら、その「難しくなるメカニズム」を確認してみようと思います。

 あらかじめ釣況予測も踏まえ、試行錯誤する中で得た「1匹の価値」を楽しむことで、大切な1日を学びの多い充実したものに変えることができればと思います。

水温低下と魚の摂餌・捕食への影響

 研究に基づく一般的な春先の魚の水温の上昇・下降に伴う魚の摂餌・捕食行動(以下、摂食活動)との関係については、かつてこの連載でも取り上げたように、水温の上昇変化とともに摂食活動も上昇していきます。

(参考:「第20回 ちょい釣りを楽しみつつ秋本番の傾向を探る」「第33回 待ちに待った春海、魚の活性を先取りするデータ釣行」)

 反対に水温下降はわずか1度であっても、摂食活動の減退が激しいという結果になっています(参考文献:「釣りの科学(森秀人著)」)。

 またアジに絞ってみると、摂食活動減少水温は摂氏15度。そして成長適水温が20~23度とされています。

 釣る側の立場からみると、15度以上になるとポツポツと食べ始め、20度付近から活発に摂食し、入れ食いに期待が持てるといったところです。(参考文献:「魚の行動習性を利用する釣り入門」(川村軍蔵著))

春の冷たい風と通説

 春になって日々温かくなる関東地方で、たまに北から冷たい強風が入ってくる日に釣り場に行くと、常連さんたちから「今日は北東風だから渋いね(なかなか釣れない)」というボヤキを耳にします。

 この通説をひも解いてみると、そこには魚の活性に影響する身近で普段から経験的に理解している熱流体力学のメカニズムにたどり着きます。