黙殺を続ける朝日新聞

 改めてだが、朝日新聞のやり方は著作権法第四十条がいうところの例外に当たるのだろうか?

ちなみにだが、例外にあたるとしても、文化庁の前掲「著作権テキスト――令和6年度版」は「出所の明示」が必要と記している(p.83)。

 この条件はまったく満たせていない。

 ほかにもメディア環境が変わった時代においてなお、「新聞紙面の慣例」などという思考停止のコメントが寄せられたが、そのような理屈が現代において安直に正当化できるものではないことに大学などで引用条件を少しでも学んだ者なら想像可能なはずだ。

 我々は我々の動画を「公開して行われた政治上の演説又は陳述」ではなく、編集したコンテンツであるとみなしていると述べた。

 このような立場をとるなら、同一性保持やコンテンツの翻案に関する疑義も生じるであろう。というのも、著作権の例外規定は著作者人格権に影響を及ぼさない≒遵守されるべきであることを明示しているからだ。

(著作者人格権との関係)
第五十条 この款の規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。(著作権法第五十条より引用)

 本稿を記しているのは、5月29日だ。

 筆者は、この間、Xから同社のアカウントにメンションを飛ばしたり、自らのYouTubeチャンネルで問題を指摘したりした。

 だが、同社は一切反応することなく1週間が経過したことになる。ネットやXには同社の記者も多数アカウントを持っていて、筆者をフォローしているアカウントもそれなりにあるのだが、不思議なまでに誰一人一切反応しない。

 黙殺しているのだ。

 インプレッションを見るに筆者の認識では相当のボリュームだが、一切、朝日新聞社は応答しないわけなので、同社の危機管理部門も無視できると判断したのだろう。単に誰も気づいていないのだとすれば相当におめでたい。

 番組(コンテンツ)名、媒体名もなく、URLもないことから、朝日新聞社からの送客を期待することもできない。完全に同社は我々のコンテンツにタダ乗りしている。その有り方から、コンテンツを作ったものに対する一切の敬意の欠片も感じ取ることはできない。

 新聞社はしばしば「ネットやSNSは信頼できない」という。

 それでは朝日新聞社は信頼できるのだろうか?

 さしあたり、筆者が目にしている一連の極めて不誠実な行為と対応を見る限りにおいて、明確にノーである。

 日本の、新聞社は朝日新聞を含めて例外的に消費税の軽減税率2%適用を受ける公的存在であり、またNHKと並んで報道を支える要のはずだが、ただただ残念なことである。

 特に報道部門のように利幅が少ない一方で、民間企業が健全な民主主義を支える重要な役割を果たしている領域の将来を考えるとき、社会からの信頼が不可欠だと考えるが、同社の信頼の基盤は心許なくなるばかりだ。

 なお朝日新聞社は自社の著作物の転載、利用に関して、ご立派な「著作権について」というサイトにおいてずいぶん厳格な論陣を張っている。

朝日新聞の各種サービスをその利用規約等で定める範囲内でご利用いただく場合や、著作権者の許諾なく著作物を利用することが法的に認められる場合を除き、無断で複製、公衆送信、翻案、配布等の利用をすることはできません。また、利用が認められる場合でも、著作者の意に反した変更、削除はできません。記事を要約して利用することも、原則として著作権者の許諾が必要です。(朝日新聞社「著作権について」)

 自社のコンテンツの利用については、「許諾させていただく場合でも、原則として使用料を申し受けております」ということらしい(前掲朝日新聞社サイトより)。

 それに対して、自らは他人のふんどしで相撲をとるのみならず、指摘してもひたすらだんまりを決め込んでいることを本稿では指摘してきた。

 朝日新聞社の一連の対応はまったく無神経で、不誠実だと考える。読者諸兄姉はこれでも朝日新聞社を信じられるだろうか。

(※JBpress編集部注)冒頭注の通り、本稿は29日夕までに執筆されたものです。朝日新聞社は29日夜、「16日収録のインターネット番組で」としていた当該記事のクレジットを「16日収録のJBpressのユーチューブ番組「西田亮介の週刊時評@ライブ」で」と修正しました。