著作権法はどう規定しているか
なお著作権法はコンテンツの引用について規定している。
(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。(著作権法第三十二条より引用)
引用は「正当な範囲内」で行われなければならないという。この「正当な範囲内」の条件とはいかなる条件か。
文化庁が公開している「著作権テキスト――令和6年度版」は次のように記している。
3 報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること、本文が引用文より高い存在価値を持つこと)
4 「出所の明示」が必要(複製以外はその慣行があるとき)(前掲テキストp.72より引用)
先ほどの朝日新聞社の引用記事を再度よく眺めてみてほしい。
「主従関係」どころか、我々のコンテンツを文字起こしして編集したコンテンツを単独で展開し、広告を山ほど散りばめた自社サイトでは有料サイトへの導線に用いられている。加えてYahoo!ニュースにも配信しているのだ。
到底「必要最小限度の範囲内」などではないだろう。なにせ「主」のコンテンツ不在なのだから。
「出所の明示」だが、たまたま筆者が著作者だから気付いたのであって、一般の読者は朝日新聞やYahoo!ニュースへの転載コンテンツから引用元の我々のコンテンツにたどり着くことはできないだろう。したがって、「出所の明示」も守られているとはいえまい。
ところで、このような趣旨のことを先日ネットで記していると、幾つかの訳知り顔のアカウントから「政治的演説は著作権の例外だ」云々というコメントが寄せられた。
確かに著作権には例外規定があり、著作権法には以下のように記されている。
(公開の演説等の利用)
第四十条 公開して行われた政治上の演説又は陳述並びに裁判手続及び行政審判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続をいう。第四十一条の二において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。(著作権法第四十条より引用)
このとき、我々のコンテンツは「公開して行われた政治上の演説又は陳述」といえるのだろうか。
その理屈は甚だ心許ない。
というのも、我々のコンテンツは、政治家が街頭などの物理的な公開の場で行った演説でも陳述ではないからだ。
JBpressが企画、主催し、関係者しか入れない自社スタジオにおいて、生配信はせずに、筆者(西田)と伊藤氏の対談を収録した。そこに字幕や図表等を加えて編集し、後日配信している「コンテンツ」なのだ。
朝日新聞社は、そのコンテンツを対談や質問を通じて引き出された話であったことを明示することもなく、まるで伊藤氏が一人で話したかのようにしつらえて、無許諾で利用している。
仮にネットや動画を新しい政治的に公開されたアリーナであるとみなすにしてもムリがある。
我々のコンテンツは、政治家や政党のアカウントが未編集のライブ配信するような「演説」や「陳述」ではないからだ。両者がまったく性質が異なるものであることにすぐに気づくことができるだろう。