再び「反日」の気配
地方遊説中の25日に「侵略の事実自体を否定する日本と戦うべきものは戦う一方、経済や安全保障協力、文化交流はやるべきではないか」と発言していた。
日韓関係は、1965年の国交正常化により、もはや「戦う」必要のない関係になったはず。それをまた、「戦う」という強い言葉で日本を攻撃の対象と位置付けている。
まさか、ロシアのように武力で攻撃することはないのだろうが、それでも、この言葉は決して穏やかではない。前半では反日を掲げて日本嫌いの有権者から支持を堅持する一方、後半では若い世代を中心とする日本好きな有権者の取り込みを狙っているのだろう。
また、李氏の所属する共に民主党も焦っている。大法院に対してあげた拳を下したのだ。
4月末に李氏に対して有罪を宣告した大法院に対して、共に民主党は強く反発。そこで、共に民主党は大法院裁判官の大幅増員と、法曹界以外の人物の任命を可能にする改正案を国会に提出していた。
だが、これに対しては法治主義や三権分立を揺るがしかねないと進歩派の支持者からも批判され、法案は撤回された。そこには、李候補への批判をなるべく少なくしようという思惑がうかがえる。
果たして、李在明氏は無事に大統領に選ばれるのか。それを妨げるには、金文洙氏と李俊錫氏という保守系候補の一本化が絶対必要だと各メディアが報じている。だが、李俊錫氏がそれを受け入れる可能性はゼロに近いという意見も多い。
李俊錫氏はかつて野党時代の国民の力で代表を務めていたものの、尹政権が発足すると、党から事実上追い出された過去があるのだ。そのうえ、金文洙氏とは政策が大きく異なっている。
となれば、李氏は僅差で当選する可能性があるが、その場合、政権運営は不安定になりかねない。そのときは、すでにその兆候が現れているように、反日ポピュリズムに走ると見込んでおくべきであろう。
平井 敏晴(ひらい・としはる)
1969年、栃木県足利市生まれ。金沢大学理学部卒業後、東京都立大学大学院でドイツ文学を研究し、韓国に渡る。専門は、日韓を中心とする東アジアの文化精神史。漢陽女子大学助教授。