ICC職員の資産凍結を決めたトランプ政権

ロスウェル:ただ、国際刑事裁判所がロシアのプーチン大統領のウクライナ戦争における戦争犯罪を捜査していたときに、バイデン政権は国際刑事裁判所に協力的でした。これはプーチン大統領の戦争における責任問題の意識をアメリカが共有していたからです。

 それに対して、トランプ政権は国際刑事裁判所にとても敵対的です。今年2月に「権力を乱用してネタニヤフ首相等に逮捕状を出している」として、ネタニヤフ首相の捜査に関わった国際刑事裁判所の職員の資産の凍結や入国制限を決めました。

 ご存じのように、トランプ政権はイスラエルを強く支持していますから、ネタニヤフ首相とガラント元国防相に対する国際刑事裁判所の逮捕状には否定的です。そして、ガザにおける戦争でも、イスラエルを徹底的に支持しています。

ドナルド・ロスウェル(Donald Rothwell)
オーストラリア国立大学国際法教授
2006年7月よりオーストラリア国立大学で教鞭を執る。オーストラリアにおける国際法、海洋法、国際極地法を専門とし、研究成果は28冊の著書、200本以上の論文などに反映されている。ABC News、Al Jazerra、BBC World、Wall Street Journal、The New York Timesなどメディア出演も多数。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。