国際刑事裁判所と国際司法裁判所、実効性があるのはどっち?

──国際刑事裁判所だけでなく、国際司法裁判所も南アフリカがイスラエルによるガザ地区のパレスチナ人に対するジェノサイド行為の疑いで提起した別の事件を審理しています。国際司法裁判所は国連の司法機関で、国際刑事裁判所は国連から独立した司法機関です。どちらのほうが強い権限や逮捕の実効性を持っているのでしょうか?

ロスウェル:国際刑事裁判所のほうが高い実効性があると思います。なぜなら国際刑事裁判所は基本的にはローマ規程のメンバー国の国内であれば、逮捕令状を出すことができるからです。また、そうでない国でも、フィリピンのように交渉次第ではその国の中で逮捕できます。

 一方で、国際司法裁判所(ICJ)の場合は、確かに1945年に国連憲章によって創設された機関ではありますが、ここは個人に逮捕状を出さず、あくまで国家という単位を対象にします。個人の罪を明らかにする機関ではありません。

──アメリカはこの問題にどのように対応していくでしょうか。また、アメリカの対応はどの程度、国際刑事裁判所による逮捕に影響を与える可能性がありますか?

ロスウェル:まず考えなければならないことは、アメリカはローマ規程のメンバー国ではないということです。逮捕状が出たからといって、その当事者に対して何かをする義務はありません。2点目に重要なことは、歴史的に見ると、アメリカはこれまで国際刑事裁判所に対しては敵対的なスタンスを取ってきたということです。

 アメリカ人、アメリカの軍人、アメリカの政治家に対して、国際刑事裁判所が訴状を出す可能性もあります。特に戦争に関することなどです。ですから、アメリカは国際刑事裁判所に対して疑念を持っているのです。