実は富裕農民だったジャンヌ

ジャンヌ・ダルクの生家 写真/神島真生

 近年の研究によれば、ジャンヌの両親は、庶民層の中でも上位層にあったことを認められている。

 父のジャックには次の実績がある。

 1423年、ジャンヌ11歳の頃、近くに野盗(もと傭兵団)が拠点を構えたとき、村を代表して交渉に赴き、村への攻撃をしない契約を結んだ。ついで1425〜27年の間、城主から「長老」(Doyen。取りまとめ、村長的な役。検察と徴税の役を負う)役を任じられたこともある。こちらはジャンヌ13〜15歳の頃である。

 もしも野盗たちが村を襲ってきたとき、村人が避難するための城館を借り受けてもいた。こうした行動には、相応の資産が求められる。事実、ジャックは准騎士クラスの人物からも名を知られており、地元では名士として扱われていた。

 そしてジャンヌの母親も親戚に司祭や修道士がいることを史料に確認されており、やや知識階層寄りだったのではないかと見られる。

 このように両親の輪郭を整えていくだけでも、ジャンヌは、村の中では貧しいどころか、むしろいいところのお嬢さんだったと思われる。