貧しい娘と述べた理由
次にジャンヌ自身が「自分は貧しい娘」と述べた理由を見ていこう。
こちらはジャンヌが「神の声」との対話において、発せられた言葉である。神の声はジャンヌに、イギリス軍に包囲されているオルレアンを救出するように要請した。
その声は、ジャンヌの村を統治する城主に面会すれば、城主が「自分と同行してくれる従者を与えてくれる」と伝えた。ジャンヌはびっくりして、こう答えた。
「自分は貧しい娘で、馬に乗ることも戦闘の仕方も知らない」
つまり、自分は貴族や騎士のように、馬に乗ったり、戦闘したりできないのに、従者を与えられて、戦地へ赴けと言われても困ると述べたのである。
このときのジャンヌは騎乗や戦闘のできる富裕層ではないと言っているのであって、「農民の中でも特に貧しかった」と言っているのではない。
これら2点の根拠を印象論で結びつけて、貧しい農民の娘だったと見るのは適切ではない。