作者の田河水泡が「のらくろ」に込めた思い
身寄りのない野良犬「のらくろ」が犬の軍隊へ入隊して、活躍する――。
1931(昭和6)年、人気雑誌『少年倶楽部』にそんな漫画が掲載されると、爆発的な人気を呼ぶこととなった。
タイトルは『のらくろ二等卒』。失敗を繰り返しながらも、ユーモアと知恵で数々の困難を乗り越えていく。のらくろの姿に、子どもはもちろん、大人も勇気づけられたようだ。戦前戦後で、大きなムーブメントとなった。
その反響の大きさに最も驚いたのは、作者の田河水泡だったのかもしれない。「何か子どもが喜びそうなものを」と編集者にリクエストされて、田河はこんな提案をしたという。
「犬を主人公にして兵隊ごっこをしたら、子どもは楽しめるんじゃないか」
こうして生まれたキャラクターが、のらくろである。NHK「あの人に会いたい」で次のように語っている。
「大工になったり、かじ屋になったり、いろいろな少年がいたわけで、これらは(雑誌を)買ってもらえない。そういう子どもを励ましてやろう。つまり、借りて読む子どもたちを励ましてやろう、ということを執筆の最初に構想したわけです」
