
笑暮屋のインクも人気が高く、「(インク一種類につき)おひとり様、ひとつまで」と販売制限が設けられるほど。レトロブームや文具ブームも追い風となっている。

国内だけでなく、海外からの注文も増えており、特に欧米やアジアの富裕層からエボナイトの加工性や質感の良さが評価されている。「供給が追いつかない状況」(遠藤社長)が続く中、同社はNC旋盤を1台から2台に増やす計画だ。「加工体制を強化することで、自社ブランドの生産増はもちろん、部品(ボディ)のOEM供給も検討しています」と遠藤氏は嬉しそうに語る。
環境にも優しい伝統素材
エボナイトには環境面での利点もある。天然ゴムを原料とすることから、環境にやさしい素材としての側面を持ち合わせている。ゴムの木は二酸化炭素の吸収率が高く、エボナイトの製造は持続可能な材料利用の一例と言える。
「SDGsが注目される今、天然素材を使った製品への関心は高まっています。エボナイトは19世紀に発明された素材ですが、21世紀の価値観に合致する部分も多いんです。エボナイトという素材の魅力を世界に広めることを使命に、あくなき挑戦を続けていきたい」。遠藤社長の表情には、伝統産業を守り抜く強い決意が宿る。伝統技術で世界市場に挑む日本のものづくりの未来を、荒川区の町工場に見た。