世界の外貨準備の半分を占めるアジアがドルを売れば……!?
万が一、市場の思惑通り、アジア金融当局が米国と自国通貨切り上げで合意しているのだとすれば、これを裏付けるためのマネーフローとして、各国の外貨準備を通じたドル売り・自国通貨買いが実施される。
そのため、米国債売りのオペレーションが相応の規模で想定されることになるが、アジア金融当局の影響力は甚大であるため、金融市場にとって強大なリスクとなる。
世界の外貨準備残高(除く金)は、最新のIMF-COFERデータに従えば、2024年12月末時点で約12.4兆ドルであった。このうちアジア諸国が抱える外貨準備は極めて大きい。
例えば、2025年3月末時点で中国が約3.3兆ドル、日本が約1.1兆ドル、インドが約5700億ドル、台湾が約4400億ドル、香港が約4200億ドル、韓国が約4000億ドル、タイが約2200億ドルと非常に大きな数字が並ぶ。
これら7カ国の合計は約6.5兆ドルと、世界の外貨準備の半分強を占めている(図表②)。COFERデータと3カ月ずれているが、このイメージが大きく変わることはあり得ないだろう。
【図表②】

4月の米金利急騰は欧州の年金基金などの長期資金が離反した結果ではないかとの思惑を呼んだが、仮にアジア金融当局のリザーブマネーが離反すれば、同等かそれ以上のインパクトになるだろう。
為替市場の傾向だけを捉えれば、確かに逆アジア通貨危機と形容するような状況にあるが、資源価格下落と通貨高が併存する現状が続けば、日本や韓国など資源輸入の海外依存度が高い国は交易条件が劇的に改善し、実質賃金が押し上げられることも期待できる。半面、米国は望まぬ米金利急騰が実体経済を直撃する展開の方が懸念される。