いよいよ過激派認定されたAfD

 BfVは第2次世界大戦後ナチスを経験した歴史から、民主主義を脅かす国内の脅威からドイツを守るために設置された。AfDの過激派認定に関するリリースにはその理由として、これまでの同党党員による言動や行動が、独基本法(憲法に相当)の原則である人間の尊厳、民主主義、法の支配に照らして、ドイツの自由民主主義の基本秩序と相容れないとした。

 AfDが「確実に」右翼過激派であると結論づけた報告書は、専門家による3年に及ぶ慎重な調査を基にしており、1000ページ以上に及ぶとされる。BfVはAfDが「差別的、かつ反イスラム的組織」であると断定した。

 その根拠について、具体的にはAfDが、同党が民族的に国民とみなすドイツ人とイスラム圏からの移民などを同等に認めていないことを挙げた。そしてこのイデオロギーを起点とし、党幹部らがある特定の人々を攻撃したり拒絶したりし、恐怖を煽動しているとしている。

AfDのヴァイデル共同代表(写真:AP/アフロ)

 そして、AfD幹部がイスラム圏からの移民を「ナイフ移民」という言葉でひとまとめに暴力的な存在と位置付けているとも記した。ヴァイデル共同党首は近年、ナイフを使用した犯罪について「全く異質で暴力的な文化を持つ人々特有のものだ。我々の文化には存在しない。アフリカと中東の文化にのみ存在する」と発言している。

 AfDはこの判断が民主主義への攻撃だとしてBfVを提訴したが、正式に過激派と認定されたことで、すでに行われていた同党への監視がより容易になると見られている。その上、基本法に照らし解党の可能性もゼロではない。過激派認定後の週末に行われた世論調査では、国民の6割以上がBfVの判断を、また5割近くが解党を支持している。

 だが解党に反対の層も4割近くある上、先述の通りAfDへの支持は下がるどころか総選挙以来高まっている。ショルツ前首相は解党に向けた早急な判断は避けるべきとの見解を示した。実際、解党は激しい世論の反発も招きかねない。この難しい局面を乗り切らねばならないメルツ新政権が首相指名選挙に失敗したことは、AfDには追い風だろう。

 ロイター通信は指名投票の騒動について「今回の失態の勝者はAfDだ」という世論調査会社代表の言葉を伝えている。また、この件がAfDに、他の既存政党が全てエスタブリッシュメントのカルテルだと印象付ける機会を与えたという専門家の声も報じた。