22年の大統領選挙当時、京畿道(キョンギド)知事だった李氏は国政監査に出席し、多数のカメラの前で、あらかじめ用意してきたパネルを掲げ、「朴槿恵政権の国土開発部から大きな脅迫を受けた」「用途変更をしてくれなければ職務遺棄で問題にするという話まで聞いた」と主張した。

 だが、朴政権の国土開発部が城南市に送った公式文書には、「用途変更に対して貴市の決定に任せる」という内容が明記されていた。城南市と国土部の関連証人たちも「脅迫を受けたという感じは全くなかった」と一貫して主張したことも明らかになった。検察はこの部分も虚偽事実公表とみて起訴したのだ。

不可解だらけの一審、二審

 韓国の最高裁法上、選挙法違反容疑に対する裁判は「1審6カ月・2審3カ月・3審3カ月」の原則を守ることになっているが、当時、金明洙(キム・ミョンス)最高裁長官の体制下で1審を引き受けた裁判官は、なぜか事件を長引かせ、1年以上耐えた末、24年1月に電撃的に辞任した。途中で裁判部が交代したせいで判決はさらに伸び、起訴されてから2年2カ月後の24年11月、ようやく1審裁判官は、李氏に対して「懲役1年、執行猶予2年」を宣告したのだった。

 1審裁判官はひとまず、李氏がキム・ムンギ氏を知らないと言った点は個人の認識に従ったものという趣旨で「無罪」と判断しながらも、国民の力が公開した2015年オーストラリア出張中にゴルフ場でキム・ムンギ氏などの城南公務員たちと撮った写真に対して李氏が「キム氏と一緒にゴルフしたたように写真を捏造された」と話した部分は「有罪」と判断した。

 この写真は団体写真の中で李氏とキム・ムンギ氏など、事件にかかわった人物を切り抜いて拡大した写真だったが、李氏は「写真を捏造された」と主張しつつ、キム氏とゴルフをした事実まで否定するかのような巧妙な言い回しをしたのだった。

 1審裁判官は、「李氏の発言は有権者には“キム・ムンギ氏と一緒にゴルフしたことがない”という趣旨で受け止められている」とし、選挙に影響を及ぼす嘘だと判断したのだ。柏峴洞事件に対しては「朴槿恵・国土交通部からの脅迫がなかった」と判断し、有罪と認めた。

 しかし、今年3月に開かれた2審裁判所は、1審裁判所の判決をすべて覆した。ゴルフ場の写真に対しては「一緒にゴルフをしなかったという趣旨ではなく、写真を捏造されたといっただけ」という趣旨と解釈して無罪を、柏峴洞事件に対しては李氏が「脅迫と受け入れたかもしれない」として、「表現の自由」という趣旨で無罪を宣言した。