大統領選挙を2カ月後に控えた時点で下された2審判決によって李在明氏の司法リスクは解消されたと思われたが、最高裁は迅速に動いた。有力大統領候補に対して1審と2審で180度違う判決が下されたことで、大統領投票を控え国民が混乱していると思ったかもしれない。法理に沿った判決は果たしてどちらなのかを国民に知らせるべきだと考えたのだろう。

李在明氏の無罪判決破棄のニュースを伝えるニュース速報=5月1日、ソウル駅(写真:新華社/アフロ)

大統領選に勝利しても「当選無効」になる可能性が濃厚

 保守・中道が10人、左派が2人で構成された最高裁の全員合議体裁判部は10対2で1審裁判官の判断に軍配をあげた。「韓国最高の裁判官」という最高裁判事らの判断は、1審の裁判部とほぼ同じで、結局、2審の無罪判決は破棄され、再び事件は2審に戻った。

 これからソウル高等裁判所は2審裁判を再開しなければならないが、破棄差し戻しの場合は最高裁の法理判断に従わなければならないだけに、李氏が無罪を勝ち取ることは不可能となった。なお、1審で懲役刑が出ただけに、新しく再開される2審で100万ウォン(約10万円)以下の刑が言い渡される可能性も非常に低い。つまり、100万ウォン以上の「当選無効刑」を避けられる確率はほとんどないのだ。

 もう一度整理すると、最高裁の判決によって、李氏がたとえ大統領に当選したとしても、早ければ数カ月内に再び大統領選挙を行う可能性が高くなった。この点こそが国民の投票心理にも多大な影響を及ぼすとメディアは分析し始めている。早くも「国民の力」側は、候補資格のない李在明候補の辞退を主張しており、大統領選挙期間中、この部分を集中的に取り上げるものとみられる。

 一方、激高した共に民主党は、李氏が有罪だと判断した最高裁判事の10人を全員弾劾すると意気込んでおり、弾劾が不可能な場合、最高裁判事の定年基準を大幅に引き下げてでも趙熙大(チョ・ヒデ)最高裁判事をはじめとする保守最高裁判事らを早期に辞任させる計画も明らかにした。すでに左派市民団体が趙熙大最高裁判事を公捜処に告発した。