時代に取り残されるNPB

 FA権取得期間の短縮は、選手のメジャー流出を加速させることに直結し、プロ野球界にとっては死活問題だ。

 また、12球団も選手のFA権取得前にメジャー移籍を認めるポスティングシステムによって、メジャーの移籍先球団から多額の譲渡金を受け取って球団運営や戦力補強に充当してきた。だが、FA期間が短縮すれば、ポスティングシステムによる移籍に対応するには、より早期に選手を手放すことを迫られる。

 ただ、一般企業においても、優秀な人材は国境を越えて会社を渡り歩くグローバルな時代になっている。プロ野球という特殊性が、今後も時代に逆行して移籍を大幅に制限できるかは議論の余地がある。

 ファンの視線はメジャーへ向き、これまでNPBが二人三脚で盛り上げてきたと思っていたメディアの報道もメジャーへと傾倒する。強硬に封じ込めようとすれば、選手会の反発を招き、公取委からも独禁法違反の恐れを指摘される。

 八方塞がりで時代に取り残されつつあるNPBに「日本のプロ野球独自の魅力を高める自助努力」を促す識者の声があるが、それは理想論であって現実は甘くない。

 野茂氏のメジャー移籍から30年。危機的な未来を予想し、中長期的な視点でファン層の拡大や収益化を図る取り組みはなされてきたか。日本の様々な分野がグローバル化の波にさらされる中で、プロ野球界も決して例外ではない。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。