1月28日になると、文春が記事の一部を訂正した。一定の経験を積んだジャーナリストなら、その訂正が報道の大勢に影響しないことが分かったが、勝ち名乗りをあげるフジ社員もいた。
大多氏が当時の社長でFMHが筆頭株主である関テレは、文春廃刊を声高に訴える情報番組まで放送した。就任したばかりの清水氏は「あらゆる選択肢が検討にあります」と文春への訴訟をほのめかした。これらもエラーに違いない。
アクティビストへの対応はなぜ遅れたか
3月31日、第三者委員会は「(文春の)同部分に関する記事内容の正誤は、本件についての本質的な部分ではない」とする報告書を発表した。フジの主張は空回りに終わり、無為な時間が過ぎただけだった。その結果、アクティビストへの対応もやはり後手に回ることとなった。
第三者委の弁護士たちは名誉毀損訴訟も扱っているから、記事の訂正が報道全体にどう影響するかを瞬時に判断できる。フジは文春報道を覆したいあまり、認知バイアスに陥っていたのではないか。
中居氏問題の一報を伝える文春が発売された昨年12月26日のFMHの株価は1790.5円。その後も株価は落ちなかった。
「アクティビストたちの買いが文春の一報のときから入っていたためだろう。文春のことより株価を注視すべきだった」(フジ関係者C)
中居問題に対する世間の関心が高まる中、港氏は1月17日に記者会見を開く。だがこれが出席者を放送クラブの記者に限定したものだったことで、逆に猛批判を浴びる。そればかりかCMを引き上げるスポンサーが続出した。
それでも、この局面でも株価は下がらず、むしろ上昇カーブを描き始めた。同31日に株価は2191円に達した。アクティビストたちが「フジの旧体制が瓦解する」とにらみ、さらに株を買い進めたからだろう。
フジ内には「アクティビストたちは文春の報道前から中居氏の問題の情報を掴み、フジが崩壊に向かうと読んでいた」と勘繰る声も少なくない。