株価が2000円を超えた1月下旬にはフジもSBIホールディングス(HD)の北尾吉孝会長兼社長(74)が動いていると見て、今度はその連携先や狙いを探り始めた。だが、やはり後手に回った。フジが優位に立って戦いを進めたライブドア問題のときとは違った。

ライブドア問題時には三菱商事出身の切れ者である飯島一暢・サンケイビル社長(78)が先頭に立ち、戦い抜いた。
「今は飯島氏のような存在が見当たらない。また金光氏と飯島氏の折り合いが悪いのは社内では知られた話。助言を求めにくいだろう」(フジ関係者C)
「清水さんは残すべき」ダルトンの要求とは異なる北尾氏発言の意図
有力なアクティビストは3社。米投資ファンドの「ダルトン・インベストメンツ」(FMH株式の7.2%を保有)、旧村上ファンド系投資会社「レノ」と村上世彰氏(65)の長女・野村絢氏(同11%強)、SBIHDの連結子会社である資産運用会社「レオス・キャピタルワークス」(同5.2%)

北尾氏はダルトンのつくった12人からなるFMH新役員案に名を連ね、フジを激しく非難した。「敵対するというなら徹底的に勝負する」と、宣戦布告も行った。しかし、今のところダルトンとレオスとの連携は発表していない。
「実際にはダルトンとレノは連携していると見ている。ダルトンとレノはそれぞれがフジを批判している。連携を伏せている狙いの1つは発信力を高めるためだろう。フジの問題点は第三者委が洗い出してくれたから、批判するのは簡単だ」(フジ関係者C)
ダルトンの新役員案には旧ジャニーズ事務所のタレントの受け皿になったSTARTO ENTERTAINMENTの福田淳代表(59)の名前もあるが、先ほどのフジ関係者Cは「話題づくりのためのダミーだ」と断じる。
「FMHとSTARTOの役員を兼任したら、利益相反になる恐れがある。たとえばフジがSTARTOのタレントのギャラを抑え、利益を高めたら、STARTOの利益は下がってしまう」(フジ関係者C)
ダルトンは金光氏と清水氏の退任を要求しているが、北尾氏は「清水氏は残しておいたほうがいい」と発言した。その狙いの1つは「金光氏との関係を分断させること」とフジ関係者Cは見ている。
「6月の株主総会まで金光氏は清水氏の手を借りなくてはならないが、清水氏の気持ちがダルトン側に傾いたら戦えない」
さらに堀江氏の名前はまだ挙がっていないが、フジ関係者Cは「間違いなく役員の名乗りを挙げる」と見る。
「フジに役員として入り、20年前の雪辱を果たすのが彼の本懐に違いない」(フジ関係者C)
北尾氏らの動きに対し、FMH側の総大将である金光氏の対応は「我々は敵対するという立場ではない」とソフト。ダルトン側の新役員案に譲歩する可能性まで示唆した。
フジ社内では弱腰に落胆する声が上がる一方で、「怪文書の件で怯んでいるのではないか」との見方もある。
株主総会が終わるまで激震は収まりそうにない。