野球離れを加速させる懸念

 球場に足を運んだファンからすれば、応援している選手のプレー中の写真や動画を個人で楽しむだけでなく、SNSにも投稿したい気持ちがわくこともあるだろう。こうした個人の投稿がSNSを通じたファン同士の交流を広げてきた側面もある。

NPBは野球ファンの気持ちをどこまで汲み取れているか。写真は2025年MLB東京シリーズ プレシーズンゲーム(写真:AP/アフロ)

 NPBも、プレー以外の時間における選手の写真や動画(140秒以内)の投稿は規定導入後も認めている。

 スポーツジャーナリストの鷲田康氏はサンケイスポーツの「球界インサイドリポート」(4月12日付)の中で、ライブ配信の禁止や配信時間の制限など規定の対象範囲を絞り込めなかったのではないかと問題提起した上で、今回の規定が「SNS時代に逆行する」と批判。「掘り起こしが叫ばれる若者世代の足が、球場から遠のくきっかけを作ることにもつながりかねないだろう」と野球離れを懸念する。

 こうしたなか、日本ハムがとった対応をめぐり、改めてNPBの厳しい姿勢がクローズアップされたことで、ファンだけではなく、日本プロ野球選手会によるNPBに対する批判がヒートアップした。

 日本ハムは、規定運用が始まった後も「主催者が承認した場合」という文言を根拠に、ファイターズの主催試合に限って「ライブ中継に準ずる行為ではない限り」との条件で一部投稿を許容してきた。このことが問題視されたとみられ、NPBが関わるプロ野球暴力団等排除対策協議会から改善勧告を受けた。

 球団は4月7日、プロ野球暴力団等排除対策協議会の顧問弁護士の見解を含めた指摘を受け止めるとし、「当球団の裁量による運用を改めており、今後は本規程に沿った適切な運用を心掛けてまいります」とのリリースを発表。この日は、東京都内でプロ野球12球団とNPBによる理事会・実行委員会が行われ、日本ハムの森野貴史ボールパーククリエーション統括部長が謝罪した。

 報道によれば、森野氏は会議後の取材で、「これまで当社がしてきた対応に関しては、色々と反省しないといけない部分や、12球団の皆さんとの確認で、抜けていた部分もあった。我々が勝手な解釈の中で進めてしまっていたことに対しての謝罪をさせていただいた」などと話して幕引きを図った。

 だが、選手会は「多くの野球ファンの皆様の声を受け止め、改めてNPBに対し、本規程の緩和・見直しを求める立場を表明いたします」とする声明を4月9日付で公表した。