安値輸出で独占体制を構築、もはや中国なしでは成り立たない

 レアアースはもともと米国や豪州でも生産されていた。しかし、中国は1990年代にレアアースを外貨獲得源と位置付け、安値で輸出を拡大。米国のマウンテン・パスをはじめとする鉱山は閉鎖や生産休止に追い込まれ、世界生産の9割を中国が牛耳る体制が出来上がった。

中国・内モンゴル自治区にあるレアアース鉱山(写真:ロイター/アフロ)

 2008年までの原油高でハイブリッド車の生産が増え、レアアースが欠かせなくなった日本の自動車産業が震え上がったのはいうまでもない。なんとか確保できても価格は数十倍に跳ね上がった。

 この教訓を生かそうと、日本は官民あげて対策に乗り出した。調達先の多様化、省資源技術の開発、リサイクル、備蓄強化といった対応だ。

 だが、現在でも日本の調達は6割を中国に頼り、米国も中国なしでは成り立たない。

注:「ベースケース」とは、既存資産および建設中の資産に加えて、実現可能性が高いと見込まれるプロジェクトからの生産を含むシナリオ

 米トランプ政権はウクライナにあるレアアース資源に興味を示す。ただ、ウクライナにあるレアアースは市場価値の低い軽希土類が中心で、含有量も中国はもちろん、豪州などに比べても少ないという。輸入商社の幹部は「圧倒的な資源量を持つ中国には太刀打ちできない」と話す。

 レアアースショック後、日本企業は対策の一環として在庫水準を引き上げたが、中国が輸出を再開したことで価格は急落し、多額の評価損が発生した。どうやってもゲームの主導権は中国に握られてしまう。

 しかも、ジスプロシウムなどの重希土類は現状、中国南部の特殊な鉱床(イオン吸着鉱)からの生産に頼るしかない。ジスプロシウムは磁石が高温になった時に性能の低下を抑える重要な役目を担う。中国が今月、統制を強化したのもジスプロシウムやテルビウム、イットリウムなど重希土類と呼ばれるものが大半だ。