米銀大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)によると、アップルは2025年にインドで約2500万台のiPhoneを生産する。通常、そのうち約1000万台はインド国内市場向けとなるが、アップルがインド製の全てを米国向けに振り向ければ、米国内需要の約5割を供給できる可能性がある。インドからiPhoneを輸入することで、対中関税の影響を軽減できるというわけだ。

トランプ氏の製造業国内回帰、「iPhoneでは非現実的」

 トランプ大統領は米国の製造業回帰を促す政策を掲げるが、アナリストやサプライヤーは、米国内でのiPhone生産はコストが関税額をはるかに上回り「現実的ではない」とみている。

 米ウェドブッシュ証券は「消費者が3500ドル(約50万円)のiPhoneを臨むなら、ニュージャージーやテキサスといった州で生産することになるだろう」と皮肉交じりに指摘する。アップルの生産体制は依然として、緊密なサプライヤーチェーン(供給網)や熟練労働力、政府支援がある中国に深く根差しているのが実情だ。

AIサーバーで国内投資、ベトナム動向も注目

 アップルは、AI(人工知能)サービス「Apple Intelligence」に必要なサーバーなど、iPhone以外の機器については米国内での生産・投資を進めている。2025年2月には、今後4年間で米国に5000億ドル(約74兆円)超を投じると発表した。これには米西部アリゾナ州で台湾積体電路製造(TSMC)が製造する、先端半導体の購入分も含まれる。

 一方、ワイヤレスヘッドホン「AirPods」や腕時計型端末「Apple Watch」、タブレット端末「iPad」の生産拠点となっているベトナムは、今回の相互関税で46%が適用された。ベトナムは、関税率が高い国・地域の1つ。だが、トランプ氏は先ごろ、ベトナム首脳との会談後にSNS(交流サイト)への投稿で、ベトナムにより有利な条件を提示する可能性を示唆した。ベトナム政府は4月10日、米国と貿易協定交渉を開始することで合意したと発表した。今後、両国は可能な限り多くの非関税障壁を撤廃する検討に入る。こちらは今後の動向が注目される。

スマホは「相互関税」から除外も別の関税区分に

 米税関・国境取締局(CBP)は4月11日、相互関税の対象からスマホやパソコン、半導体製造装置などを除外した。ただし、トランプ大統領は4月13日、自身のSNSへの投稿で「関税の除外はない。別の関税区分に分類されることになる」と述べた。

 こうした中でもアップルは最終的に適用除外を勝ち取りたい考えだ。同社にとって、関税問題は経営の大きな不確実要素であり続けており、サプライチェーン戦略の柔軟性と、米政権との交渉力があらためて問われる局面となっている。