本物そっくりのレシート画像も生成可能に

 たとえば、歴史上の悲劇的な事件や政治的な場面までもがジブリ風のタッチで再現され、ネット上に出回ったことで、倫理的な観点から問題視する声が起きた。

 また、ジブリ風の画像が生成できるということは、スタジオジブリが著作権を持つコンテンツをAIが「学習した」という意味であり、そこに著作権上の違反行為は発生していないのかという、より具体的・法律的な問題点も指摘されている。

 そうした批判の中で持ち上がってきたのが、強化された画像生成機能が、さまざまな詐欺行為に利用されてしまうのではないかという懸念だ。

 前述の通り、今回のアップデートでは、画像内の文字描画能力も格段に向上している。それを利用して作成したのが、冒頭の卒業証書画像だ。

 この画像をどうやって生成したのか、入力したプロンプトが何だったのかについては、あえて伏せておくこととしたい。その理由は、こうした画像が犯罪行為に利用されかねないためである。

 もちろん、ある大学を本当に卒業したかどうかなど、その大学に問い合わせをすれば一発で確認できる。したがって、こんな画像が1枚あったとしても、いつまでも噓をつき通すことはできないだろう。

 しかし、たとえばSNS上で信頼感を得るための小道具の一つとしてはどうだろうか。

 筆者が「私はハーバード大卒です」という言葉とともにこの画像を添付したとして、どのくらいの人々が実際に確認し、さらに「この画像はフェイクだし、大学側にも確認したが、小林はハーバード大など行っていない」と声を上げるだろうか。いたとしても、それはごくわずかな人々で、大きな声にはならないだろう。

 そうこうしているうちに、「小林は有名大学を卒業した優秀な人間だ」という信頼感が醸成され、筆者はその信頼感を梃子に、本当のゴールとなる別の詐欺行為を働けるかもしれない。

 そうした、いわば「カジュアル詐欺」を容易にするツールとして、ChatGPTの新しい画像生成機能が使われてしまいかねない。

 もう一つ例を挙げよう。次ページの画像も4oの画像生成機能を利用したフェイク画像なのだが、描かれている内容はまったくのデタラメとはいえ、本物のレシートのように見えるのではないだろうか。