晴海フラッグの投資妙味を検証

 75m2、坪単価689万円(1億5800万円)の住戸は、賃貸すると73m2、賃料単価1万8000円程度であるから投資利回りは3.14%となる。これはあくまでも表面利回りである。管理費、修繕積立金、固定資産税等が引かれた実質利回りはこれを下回る。

 同様に107m2、坪単価826万円(2億6800万円)の住戸は、同様の賃貸物件の希望価格である坪1万8600円で貸せたとしても利回りはわずか2.7%になる。つまり運用利回りとしては魅力がないということになる。

 では晴海フラッグで今の売却希望価格で購入した投資家が将来、売却益を期待できるか、ということになる。最近、マーケットでは「不動産価格はまだまだ上がるから大丈夫」と呪文のように唱える向きがある。本当にそうだろうか。

 仮に年間賃料が450万円の物件を1億円で取得すると表面利回りは4.5%である。この物件を売却するとき、期待賃料が450万円のままであれば、3.5%でもよいと考える買い手がいれば価格は1億2857万円で売却できる。さらに2.5%なら1億8000万円、0.5%なら9億円でも買い手がいることになる。

年間賃料を450万円と想定した場合の期待利回り(単位:千円、筆者作成)

 いわば晴海フラッグはこのシミュレーションでいえば4.5%で買った物件を2.5%の利回りでも買い手がいるという想定でマーケットが形成されているということになる。

 ただし、日銀が利上げ基調を鮮明にし、今後も数度にわたって金利引き上げの余地があるとアナウンスする中、期待利回りはどんどん下がってでも晴海フラッグを取得しようという投資家が今後も存在し続けるかどうかは疑問だ。

 利上げが繰り返されれば、円安を背景に投資意欲を高めていた外国人投資家も態度を変える可能性があるだろう。
 
 現在の好況を維持するためには賃料水準がインフレを背景に上がっていくというシナリオだ。現に、賃貸マーケットでは賃料水準を引き上げる動きもあるが、日本では借家人の権利が強く保護されていて、契約更新時に賃料引き上げに必ずしも応じる必要はない。

 いくら給与があがったといっても賃貸マンションに50万円も100万円も負担できる人の数は限られる。

 また東京都といえども外国人の増加に頼らない限り人口を維持していけないことなどを加味すると、インフレを理由に賃料を勢いよく引き上げられるエリアはかなり限定的だ。

 実際に晴海フラッグでは現状の希望賃料でも成約事例は少ない。今後の賃料アップに期待するのはかなりお花畑な期待といえそうだ。
 
 さてリビオタワー品川はどうだろうか。賃料の上昇期待はともかく、キャピタルゲインが必ず実現できると多くの人が考えているのではないだろうか。

 上げ相場があれば下げ相場があるのが投資の世界。品川港南地区での賃料上昇に期待したいところだ。