プーチンは困難な決断を下すことにストレスを感じている
プーチンが時間稼ぎをしているように見えるのは「マッチョなステーツマンを装うプーチンが性急な対応を迫られる場合、困難な決断を下すことにストレスを感じていることを浮き彫りにしている。簡単な答えがない場合、彼は回避や先延ばしを試みる」とガレオッティ氏はいう。

停戦提案を拒否すればプーチンはトランプ氏との関係を悪化させるリスクがある。一方、停戦を受け入れれば政治的に大きな影響力を持つロシアの超国家主義者を怒らせる。プーチンは「新しい状況を理解するのに十分な時間」を欲しているように思えるという。
「プーチンはすべての取引に反対しているわけではない。彼は最近、ウクライナ東部戦線からクルスク奪還のため部隊を動かした。停戦を想定し、前線が凍結される前にウクライナ軍をロシア領から追い出したいと考えていることを示唆している」(ガレオッティ氏)
最終的にプーチンが何を決断するのか予測できない。「懸念されるのは双方のリスクにより彼が躊躇してしまうことだ。トランプ氏の忍耐がいつまで続くか分からない。加速した“トランプ時間”の中でプーチンが引き延ばせば引き延ばすほど機会を逃す可能性が高くなる」という。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。